- 車の相続とは
- 相続人になる人
- 相続手続きの具体的な流れ
- 相続税について
- 保険も切り替えることを忘れずに
- まとめ
・記事の信頼姓
この記事の書いている私(キノさん)は、査定士として中古車業界で10年・約2,500台の査定をしてきました。弁護士関係や相続に関する仕事の対応経験もありますので、記事の信頼性担保に繋がると思います。
1. 車の相続とは
相続とは、人が亡くなった際に、その人が持っていた財産を身内の人がもらい受ける制度のことを指します。
相続されるものには、プラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産も含まれます。
車の相続とは、亡くなった人(被相続人)の車を身内の人(相続人)に譲渡することを指します。
車が相続対象であることを確認
亡くなった人の所有物を譲渡する訳ですから、所有していたことの確認が必要です。
車検証の所有者欄を今一度確認して、亡くなった本人であることを確認しましょう。もし所有者がディーラーやローン会社になっている場合は、使用者欄に本人の名前が記載されていれば問題ありません。
ローンがある場合は相続人に引き継がれる
マイナスの財産も相続対象ということなので、車のローンが残っている場合は相続人に引き継がれます。ローンの処理には幾つかの方法があります。
- 車を売却してローンを返済する(売却額がローンより低ければ追い金が必要)
- ローンを一括で精算する
- 車を使用する事を前提にローンを引き継ぐ(ローンの審査がある)
特に乗るつもりのない車であれば売却してローンを返済することをお勧めしますが、購入したディーラーに引き取りもお願いしてしまうと、本来の価値よりも低く見積もられてしまう可能性があります。相続案件にも慣れていて、価格も安心できる買取店に査定してもらうことをお勧めします。ここは後でも触れます。
≫参照:査定士がお勧めする良心的な全国対応の車買取店
2. 相続人について
相続には、指定相続と法定相続があります。
・指定相続とは
遺言書で指定した相続のこと。この遺言により指定された相続分を指定相続分という。被相続人の意思が尊重される一方で、特定の人だけが有利になったり、法定相続人が遺産を相続できないというケースにも発展する。
民法で定められている相続で、相続人が相続する遺産の割合が定められている。定められた相続分を法定相続分という。遺言書で指定相続分が決められている場合は指定相続分が優先される。
遺言書がある場合は検認を申し立てる
遺言書がある場合は、相続人は家庭裁判所に「検認」の申立てを行いましょう。検認とは、遺言書が存在すること及びその遺言書が本当に被相続人によって作成されたものであることを確認する手続です。検認をせずに遺言を執行すると5万円以下の過料が科せられるので注意しましょう。
遺言書がない場合は民法で相続順位が決められている
民法に従って相続人になる人のことを法定相続人と言います。
法定相続人は、配偶者と血族相続人に分けられ、配偶者は相続順位の枠外に位置しており、被相続人がなくなった場合配偶者がいれば必ず相続人となります。
血族相続人の下記で、先順位の血族相続人がいる限りは、後ろの血族相続人には相続順位が回ってきません。
- 第一順位:被相続人の子
- 第二順位:被相続人の親
- 第三順位:兄弟姉妹
ますは配偶者、その後→子→親→兄弟姉妹、という順番になるということです。
3. 相続手続きの具体的な流れ
車の具体的な相続手続きの流れについて説明します。
遺言書による代表相続人が指定されている、または法定相続人が決まっている状態とします。
まずは、「名義変更をして他の人が乗り続ける」のか「故人の車を売却するのか」を決めましょう。
3−1. 名義変更をする場合
ワンストップサービス(全国対応)や各エリアの行政書士に依頼する、又は自分で書類を陸運局に持ち込むことで名義変更が行えます。全体的に言えることは、車の名義変更だけを請け負うサービスは単価が低いのであまり積極的に行っている業者が多くないのが現状です。
もし引き継いで乗り続けたいという強い思いがなければ、売却をしてしまうことも手間を考えるとお勧めです。
必要書類(普通車)
- 車検証(自動車検査証)
- 被相続人の戸籍謄本又は除籍謄本(死亡の日付が記載されていること、相続人全員の記載がある書面)
- 相続人全員の印鑑証明書(取得から3ヶ月以内)
- 委任状(代表相続人の実印を押印)【ダウンロード】
- 譲渡証明書(代表相続人の実印を押印)【ダウンロード】
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印の押印が必要)【ダウンロード】
必要書類(軽自動車)
- 車検証(自動車検査証)
- 申請依頼書(被相続人の認印を押印)【ダウンロード】
3−2. 売却する場合
売却する場合は、まずは車の査定をしてもらう、査定額に併せて必要書類を揃える、売却する、という流れとなります。
査定を依頼する会社は、中古車査定士がお勧めする良い買取店の見分け方を参考にしてみて下さい。
戸籍謄本や遺言書等の機微な書類を扱いますので、通常より安心して任せられる買取店に依頼するのがお勧めです。
査定額が100万円を超える場合の必要書類(普通車)
- 車検証(自動車検査証)
- 被相続人の戸籍謄本又は除籍謄本(死亡の日付が記載されていること、相続人全員の記載がある書面)
- 相続人全員の印鑑証明書(取得から3ヶ月以内)
- 委任状(代表相続人の実印を押印)【ダウンロード】
- 譲渡証明書(代表相続人の実印を押印)【ダウンロード】
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印の押印が必要)【ダウンロード】
100万円を超える場合は、書類が多くなりますので少し大変です。
査定額が100万円以下の場合の必要書類(普通車)
- 車検証(自動車検査証)
- 被相続人の戸籍謄本又は除籍謄本(死亡の日付が記載されていること、相続人全員の記載がある書面)
- 代表相続人の印鑑証明書(取得から3ヶ月以内)
- 委任状(代表相続人の実印を押印)【ダウンロード】
- 譲渡証明書(代表相続人の実印を押印)【ダウンロード】
- 遺産分割協申請申立書(代表相続人の記載と実印の押印)【ダウンロード】
100万円以下の場合は代表相続人の書類を準備すれば良いので書類が少し簡略化されます。
必要書類(軽自動車)
- 車検証(自動車検査証)
- 申請依頼書(被相続人の認印を押印)【ダウンロード】
軽自動車の場合は変わらず簡単です。
4. 相続税について
結論から言うと、余程価値の高い車でない限り、車の相続で相続税がかかるということはありません。
自動車には特定の財産評価計算はありません。家具家電などと同様に一般動産として評価されます。
一般動産の評価方法は基本は次の金額を参考に決定されます。
- 売買実例価格
- 精通者意見価格
売買実例価格
市場での買取価格のことをを指します。今ではインターネットや電話で、「車種」「年式「走行距離」などを伝えるだけで概算の査定額を教えてくれます。ただし車を見ていない状況なので、幅のある査定額であったり、実車の査定に繋げる為に少し高めに言われてしまうこともあります。相続税評価額は少しでも低い方が良いので、精通者意見価格の方が現実的な価格を知ることができると言えます。
精通者意見価格
実際に車買取業者が車を査定して算出した査定額のことです。車の状態(傷や装備品)も細かく査定された価格の為、インターネット等で行った査定よりも現実的な価格です。
耐用年数と定率法から計算する
車が特殊で相場が不明な場合や、年式が古い場合査定ができないこともあります。
そのような場合は、新車価格から減価償却費を差し引いた価格で評価することもできます。自動車の税法上の耐用年数は長くても6年(軽は4年、トラックは5~6年)の為、新車から7年以上経過している場合は、評価額を0とできます。
相続税の計算
車の相続における相続税は、遺産全体の価額をもとに計算します。そのため、車の価値を遺産の価額に加えます。
ただし車以外のものを含めた遺産総額が相続税の基礎控除額以下であれば、相続税は課税されません。
相続人の数と相続税の基礎控除額
相続人の数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | ・・・ |
基礎控除額 | 3,600万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 | ・・・ |
車の買い替えサイクルは現在約9年前後で、新車価格としても1,000万円を下回る車が全体の90%以上を占めます。買取の現場をしていて全体の買取車両の平均価格は50万円〜60万円ぐらいに感じます。
そこからも車の相続における相続税は限りなく0に近いと言えるでしょう。
5. 自動車保険の切り替え
車の名義変更は行わなくても、違法ではありません。実際、人が亡くなられると色々とバタバタしますので後手に回ることが多いと思います。
しかし名義変更をしていなくても車に乗る場合は、「自賠責保険」と「自動車保険」(加入している場合)の変更もしておく必要があります。
変更していないと補償が受けられないことになり、かけている保険金も意味がなくなる為です。各保険ともに加入している保険会社の名前が証券に記載されています。速やかに保険会社に連絡をして変更しておきましょう。
査定額に適した保険に切り替える
車の査定額を知ったこの機会に、査定額に見合った自動車保険に切り替えるのも手です。普段の生活をしていると乗っている車の評価額を知る機会はあまりありません。購入当初は高い車両保険に加入していたとしても、数年乗って評価額が下がった車には見合った保険内容ではなくなるからです。今入っている保険会社に相談してみるか、webだけで複数社の見積もりがもらえるサービスを利用して、状況に合った保険を検討するのもお勧めです。
6. まとめ
これまでのことを簡単にまとめます。
- 車の相続とは、譲渡(名義変更)をすること。
- 相続人は遺言書があるかないか。なければ民法で決まっています。
- 名義変更を個人で行う、業者に依頼するのは中々ハード。拘りがなければ売却しましょう。
- 相続税はほぼかかりません。
- 相続しなくても乗る場合は保険を必ず切り替えましょう。
以上となります。これからは高齢化社会が益々進み、相続問題も多くなると思います。
車はすぐに手をつけないと!といものではありませんが、放置をしても価値は下がるし、税金も毎年かかるので、できるだけ早期に故人の車をどうするのか動かれた方が経済的ですね!